CIOTA(シオタ)とその成り立ち
CIOTA(シオタ)は2019年秋冬から始動した岡山に本拠を構える縫製工場・生地製造販売会社、「株式会社シオタ」が立ち上げたアパレルブランド。
工場のシオタの綴りは「shiota」で、ブランド名の「CIOTA」はそのスペル違いになります。
デザイナー兼ディレクターは荒澤正和氏。
工場を生産拠点として持っている強みを活かし、デザインと生地・縫製を密接に関わらせてハイクオリティな商品を適切な価格(よりも安く)で生産しています。
原料の選定から生地生産、縫製まで自社完結ですべておこなえるというのはどのブランドでもできることではありません。
「シンプルであること、着心地がよいこと、上質であること。
洋服づくりのすべての工程で品質重視を貫くこと」
これを理念として、トレンドを問わないオーセンティックでハイクオリティな商品を展開しています。
CIOTA(シオタ)にとってのスビンコットン
CIOTAの特徴といえばやはり素材へのこだわり。
特にコットンに関してはスビンコットンと呼ばれる自社開発のオリジナルのものを使用しており、そのクオリティの高さからブランド開始時より注目を集めました。
スビンコットンはインド南部でしか生産されない「綿花の王様」と評されるコットン。
名前の由来はスビンコットンを構成する2品種の頭文字から。
インド原産のスジャータ(Sujata)綿と、カリブ海の島国であるセントビンセント(St.Vincent)で栽培されているシーアイランドコットン(海島綿)との交種、それぞれの頭文字をとってスビン(SUVIN)と名付けられました。
スビンコットンは超長繊細綿、いわゆる超長綿に分類され、繊維の一本一本がとても長く細いため、滑らかで上品な風合いの糸を作ることが出来ます。
また、コットンの収穫が手摘みでおこなわれていることも特徴。これによってさらに品質を維持することが可能になります。
カシミヤのようになめらかで、シルクのように上品な光沢をもつコットン。
これらでオーセンティックなアイテムを作ることでシンプルなのにどこか目を惹く、CIOTAらしさが実現しているのでしょう。
CIOTAにとってスビンコットンは特別な素材であることを証明するように、コレクションのラインナップの多くのアイテムにこのスビンコットンが使われています。
これはスビンコットンの光沢感や上品さをうまく調理できるからこそ、多くのアイテムに使うことができるのだと思います。
スビンコットンをただ使っているからすごいのではなく、たとえばデニムに用いる場合とモッズコートに用いる場合で糸の太さや単糸双糸、染色方法などを変えてそれぞれに合ったかたちで使いこなしていることがCIOTAの魅力だといえるでしょう。
CIOTA(シオタ)とデニム
今となってはCIOTA定番のアイテムであるデニム。
だがブランド立ち上げ時は商品構成に入っていなかったそうです。
shiotaは70社を超えるデニム工場激戦区の中でも伝統ある岡山屈指の縫製工場。
ディレクターの荒澤氏はもともとジーンズが好きで製作にも自信があったようですがLevi’sという巨大な先駆者もあり自分で作る必要があるのか…と考えていたようです。
しかし、スビンコットンを使用したデニム地でサンプルを作ったところそのクオリティの高さを見て作るしかないと考えを改めたそうです。
生地ももちろんですが、縫製もshiotaの工場で製作しているのでつくりも高クオリティを実現できたのでしょう。
デニムを作るにあたっては荒澤氏の想いもあったようで、自身が40歳を超えて大好きだったデニムが億劫なアイテムになってしまったという背景があります。
穿きこんだものだとしてもデニムは質感としてはゴワゴワしていて、確かに普段から穿くパンツとしては少し敬遠されるのもわかる気がします。
オーセンティックなアイテムだけにワードローブに取り入れたいところですが、着用感でみるとリラックスウェアに流れてしまうのも仕方ないのかもしれません。
そこでCIOTAでは柔らかくコンフォータブルなデニムパンツを作ることを決めたそう。
スビンコットンを緯糸(よこいと)に用いて肌あたりの面をソフトにし、全体的な質感も柔らかく仕上げることでオーセンティックな見た目ながら穿き心地は快適でデイリーユースしたくなるように作られています。
これまでのブランドだとどちらかを突き詰めたものが多かった印象ですが、CIOTAはこの2要素を高いレベルで融合させ、それでいながら価格もおさえるという高次元なものづくりをおこなっています。
一過性にならないコンフォータブル
コンフォータブルやノームコアといった「シンプル、快適、上質」が求められる風潮もあり、多くのブランドがコンフォータブルでノームコアな商品展開をしていますが、CIOTAはそんなブランドの中でも長期的な提案をしているようです。
デニムジャケット、ジーンズ、カーゴパンツなど、古着として昔からあるような定番のアイテムが一周回って流行のアイテムのように取り沙汰されることもある昨今、それらのアイテムがブランドの「顔」となってしまうとブームの衰退とともにブランドの人気や注目度まで落ちてしまうという、よくない流れがあるのも事実でしょう。
CIOTAはその流行や需要にたいしての潮目を読む力がとても長けているように感じます。
例をあげると、人気商品であるワンウォッシュデニムとベイカーパンツの展開を2022年春夏からやめており、もともとオーセンティックなアイテムが流行りすぎて一過性のものになってしまわないよう意識しているようです。
いつでも人々に寄り添う服たちだからこそ、時代の潮流に巻き込まれすぎないものづくりのスタンスが大切なのかもしれませんね。
ファクトリーブランドだからこその柔軟性
CIOTAの強みはファクトリーを持っていること。
先ほどのご紹介しましたが、原料の選定、生地の製法、デザイン、縫製、製造といった服作りの工程をすべて自社で完結できるわけです。
これによって一切妥協のない服づくりが可能となります。
また、生産のフローに他の組織や会社を絡ませるとどうしても納得のいくクオリティを求める際に意思疎通がむずかしかったり齟齬が生まれたりしますが、自社で生産を完結することでそういった問題が起こりづらくしています。
そのほかコスト面に関しても余計な交際費や移動費がかからないなどのメリットがあります。
ムダな経費を削減し、洋服のクオリティをあげることに充当することで高品質な製品を価格を抑えて提供することが可能になるわけですね。
また、生産基盤があることで大手セレクトショップとの取引も大きな規模で可能であったり、各ショップの別注にも柔軟に、細やかに対応することができたりとファクトリーの強みを活かした舵取りができます。
ショップによってはパターンから別注することもあるようで、その際にも齟齬が生まれにくい生産体制を持っているというのは商品のクオリティにも良い影響を与えることだと思います。
妥協のないパターンメイキング
CIOTAの妥協のない服づくりはパターンメイキングにもあらわれています。
CIOTAの素晴らしい点は定番のアイテムをそのオーセンティックな雰囲気はそのままに、現代の生活に合わせてアップデートしている咀嚼力であると思います。
デニムやミリタリーなど、CIOTAのラインナップはアイテムだけを見るとオールドやヴィンテージの古着のような世界観とも近い印象を受けます。
が、たとえばヒップ周りのおさまりのよさであったり、野暮ったすぎない裾まわりのゆるさであったりが現代の洋服として完成されていてカジュアルな着こなしをする人以外にも難なく取り入れることができます。
このあたりはパターンメイキングの妙ともいうべきでしょうか。
ただただノームコアで綺麗すぎる、なんてこともない絶妙な古着の魅力も詰まったようなシルエットに感じます。
そしてなんといってもCIOTAのリスペクトすべき点はレディースでもこのパターンが実現されていることでしょう。
CIOTAのレディースはただメンズパターンをサイズダウンさせるだけではなく、レディース独自の体型に合うようパターンを変えて作られています。
CIOTAを選ぶ女性のスタイルとしては少しヴィンテージライクでカジュアルな装いが多いかと思いますが、古着で揃えるとなると土臭さが強くなったりメンズシルエットをゆとりを持って着ることになってしまいます。
女性の身体の特性に合わせてパターンメイキングを作ることで、メンズ服の小さいサイズを着るのでは出せない「レディースカジュアル」を生み出すことができるのだと思います。
もちろんメンズレディース共通のマスターパターン(基準となるパターン)を作り、そこから大小サイズ展開していく方が何倍も効率的です。
メンズとレディースのパターンの差は目では大きく違いがわからないほどの細やかな調整だと思いますし、ここにきちんと労力を割くかどうかはどれだけ真摯に服づくりに向き合っているかの哲学が大きく関わってくると思います。
私はCIOTAを、コストパフォーマンスがいい単なるファクトリーブランドとは捉えていません。
妥協ない工程と揺るがない哲学で生み出された、着る人のことを考えたブランドだな、と感じています。
CIOTAの服づくりへの情熱にリスペクトを送りたいと思います。
CIOTA(シオタ)のお買取について
D’arteでは、ノームコアブランドの買取をおこなっております。
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