本日はAraki Yuu(アラキユウ)について。
Araki Yuu(アラキユウ)
デザイナーは荒木勇。
ブランド設立前は量産工場で働いていたキャリアをもち、資本主義的な大量生産の現場にふれたことから洋服づくりの原点を意識するようになったそうです。
すべての工程を自分たちの手で作ることで、大量生産・消費の時代にものづくりの責任を示した、ということでしょうか。
手作業、と聞くと前時代的なアルチザン然としたものを想像してしまいがちですがAraki Yuuの洋服は品があって、むしろ現代の日常にうまく溶け込む丁寧な「手仕事」だな、と感じさせます。
シャツからはじまったブランドも今ではフルラインナップでリリースされており、シーズンを重ねるごとに一点一点の洋服のクオリティはもちろん、ブランドが表現するイメージもより肉づけされていっているように感じます。
日常に溶け込むクラシック
Araki Yuuの服づくりの巧みなところ、それはクラシックな洋服を「日常に溶け込む」ワードローブに昇華していることではないでしょうか。
Araki Yuuの洋服たちはヨーロッパのクラシックなワークウェアからインスパイアされたものが多く、一見するととても力強い迫力のある服と捉えられそうですが実は街によく馴染む丁寧な服だということがわかります。
日常の風景をバックにしたブランドのルックを見ても、それを感じることができます。
後述する染めや真鍮ボタンの加工、機屋(はたや)と共同開発した生地など、取り入れている要素のそれぞれはアルチザンライクなものですが、全体のまとまりとしては要素の少ないシンプルで綺麗な服という印象を受けます。
Araki Yuuの洋服が強く支持される理由は、単品の洋服の迫力もありながらコーディネートを組む際の要素の少なさ(まとめやすさ)が「気分を上げてくれるのにスタイリングも組みやすい」、パワーピースとワードローブの両方の性質をあわせ持っているからではないでしょうか。
手仕事と責任
荒木氏が自らの手仕事で洋服を完成させることはアパレル業界に対する一種の責任のように感じます。
そしてAraki Yuuでは荒木氏と同じように国内の機屋(はたや)もその責任を果たしているのだと思います。
ワンシーズンでわずか150着ほどの生産に限られるAraki Yuuの洋服。
それを作り上げるために生地の作り手、洋服の作り手がそれぞれの工程にきちんと責任を持つものづくりをすることで単に「消費」されない洋服を目指しているのではないかと感じます。
Araki Yuuの洋服には一点一点ナンバリング(通し番号)が印字されていますがその数字も2500を越えようとしています。
その2500という数字がいかに想いのこもった意味のある数字なのか。リスペクトを感じずにはいられません。
真鍮ボタンについて
Araki Yuuのディテール面での「顔」ともいうべき真鍮ボタンにも触れておきましょう。
実家が鉄工所なことから真鍮を使って作りはじめたというこのボタン。
削り出し、成型、バリ取り、エイジング加工など一つずつ手作業で作られています。
また、シーズンによっては白や黒の塗料によるコーティングが施されたものもあり、塗料が剥離していくと下の真鍮が徐々に見えてくる経年変化を楽しめます。
そのほかにも2019AWからは本水牛ボタンなど、他の材質でのボタンも登場しています。
こちらも炙って加工されており、Araki Yuuのブランドイメージの幅を広げてくれるパーツになっています。
パーツひとつをとってみても服作りに対する強い意志を窺い知ることができますね。
Made by Handという考え方
シーズンテーマをこれといって設けていないものの、手仕事というスタンスはシーズンを超えて大事にしているAraki Yuu。
2016AWからスタートしたMade by Handというプロジェクトでもそのこだわりを見ることができます。
コラボレーションという形で日本のクリエイターの手仕事によるものづくりを発信しているこのプロジェクト。
Naoko Watanabe氏と製作したレザーサスペンダーやベルトは手縫いで作られており、Made by Handのコンセプトにマッチした仕上がりになっています。
またSUGINARI MORIMOTO氏とのコラボレーションではサイドゴアの短靴やダービーシューズがリリースされ、このコラボはまさに森本氏の知名度をさらに大きくすることとなりました。
単なるコラボレーションではなく意義のある共作、という想いを強く感じますね。
Araki Yuu(アラキユウ)のための生地
ここまで縫製やパーツについての「手作り」について見てきましたが、もちろん生地に関してもその想いは込められています。
Araki Yuuの生地はすべて国内の古くからある機屋で織られた生地が使われており、その多くがAraki Yuuのために織られた他には出回らないものです。
いくつか例をあげながらご紹介していきましょう。
こちらはウール生地。
Super140’s woolを使用しており、きめ細やかな繊維を使いつつもスーツ生地ほど整いすぎてもいない絶妙な生地感になっています。
繊度16.5ミクロンの羊毛、通常であればラグジュアリーすぎる質感になってしまいそうなところですが旧式のションヘル機で織っていることもあってかローデンクロスのような重厚感もあるように見えますね。
お次はウール、アルパカ、コットンの3者混。アレクサンドラツイル(Alexandra twill)。
もともとはアレキサンドラツイルという高級裏地として使用されていたものを表地としてアップデートされたこの生地は経糸には超長綿(スーピマコットン)の40番双糸、横糸はウール/アルパカ 24番の混紡糸を使用し綾織に織り上げてあります。
生地から毛羽立って見えているのは毛足が長いアルパカの毛糸。
反染めではないのでアルパカ繊維だけ白いまま残っていいアクセントになっています。
経糸に18番単糸の麻(リネン)、緯糸に8番単糸の麻(リネン)と番手の異なるリネンを織り上げたリネン生地はザラつきと凹凸感があります。
組成表示を見ただけでは判断できないのが生地の面白いところですね。
こちらは経糸に10番のローシルク、緯糸が16番のウール95/カシミヤ5の混紡毛糸と25番リネンを使用したヘリンボーンツイード。
こちらはウールシルク。
経糸にウール、緯糸にシルクを使って綾織にしてあります。
生地にした後に手作業で起毛感を出してベルベット調に仕上げているようです。
毛足の関係なのか、黒貂の毛皮のようにも見えますね。
こちらはシャドーチェックの生地。2017AWに使用されていたものです。
ウール73%、コットン8%、リネン8%、ナイロン8%、ポリエステル3%という混紡祭りのプレミアムな生地。
しかもこの生地には縮絨がかかっていて、チェックになっている部分だけ縮みが起こるように繊維を使い分けています。
同色のチェック柄ですが縮絨で柄を表現するというのがとてもユニークな技法だと思います。
シーズンコードの読み方
最後にちょっとしたおまけ。
買取をする際にあると便利なので自分なりに調べたシーズンコードの読み方を記しておきます。
紙タグに記載されている最初のアルファベット二文字がシーズンと対応しています。
2016SS→DE
2016AW→SE
2017SS→TH
2017AW→FO
2018SS→FI
2018AW→SI
2019SS→SV
2019AW→EI
2020SS→NI
2021SS→EL
ぜひ参考にしてみてください。
Araki Yuu(アラキユウ)のお買取について
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