今回はCristaSeya(クリスタセヤ)について。
ブランドの特徴でもあるシンプル、ミニマルなデザインはCristaSeyaが生まれたころから特に「ノームコア」といった括りで注目を集めることになりますが、未だ第一線で活躍するCristaseyaのクリエイションは単純にシンプルに作りました、というような簡単な構造はしていないように感じます。
「飽きのこない普遍的なデザイン」というわかりやすい言葉だけでは説明できないようなハイコンテクスト、ハイクオリティなつくり。
私たちがCristaseyaを見たとき、着たときに感じられる上質さはどのような哲学のもとに生まれているのか。
このコラムで少しだけ、紐解いてみます。
CristaSeya(クリスタセヤ)の哲学
Cristaseyaのはじまりは2013年。
イタリア人のCristina Casini(クリスティーナカジーニ)と日本人の瀬谷慶子が「ファッションとアート、写真を横断するライフスタイル・プロジェクト」として立ち上げたブランドです。
「Cristaseya」というブランド名は2人の名前を合わせてつけられた名前ということですね。
Cristaseyaの特徴といえばそのシンプルさ、上質さですが、これらを実現するため彼女らのクリエイションは一般的なファッション業界とうまく線をひく工夫がなされています。
それは「Edition(エディション)」という枠組みでの発表方法。
ファッション業界がもともとの構造として持っている「S/S(春夏)」「A/W(秋冬)」という区分けをいっさい排してあくまで6ヶ月に一度の新作を発表する、というスタンスをとっています。
ファッション業界の常識ともいえるシーズン(季節性)に沿った発表というものから距離をおくということはおそらくかなりの覚悟がいることでしょう。
ブランドを取り扱うショップやそれを買い付けるバイヤーはシーズンを意識した商業的な動き方が求められてしまいますから、
ただ、逆を返せば「本当にものの出来や品質で見てほしい、選んでほしい」という覚悟と自信のあらわれともいえます。
売れるタイミングに売れるものをつくる、というシーズン性を排する分、本当にいいものが完成したときに発表するというスタンスの方が個人的には素敵だと思いますし、それを望むショップとお客さんと良いリレーションシップを築きながら歩んでいけるというのはたくさん売れることよりも意義深いものなのかもしれません。
その証拠にCristaseyaの哲学のひとつとして「きちんと時間をかけて洋服をつくる」というものがあります。
これは一着を丁寧につくる、という意味ももちろんあると思いますが、完成するまでにも多大な時間と手間をかけて生み出すんだという意志があらわれているように感じます。
この妥協ないものづくりが見た人、着た人に「上質な異質さ」を感じさせているのだろうなと思います。
オーセンティックで色気ある「引き算」のデザイン
Cristina Casiniさんはブランド創設前の20年間、スタイリストをしていた経歴を持っています。
その中で「シーズンごとに刷新されてしまうファッション界のシステムに疲れてしまった」と語るCristina Casiniさん。
時代を超えて毎日着ることのできる、遊び心と好奇心に溢れたすぐに消費されることのないデザインを求め、「シーズン」との距離をおいたCristaseya。
その中で彼女たちが大切にしたのは「オーセンティックさ」。
無駄な装飾を省き、シンプルながらも上品さを感じさせるデザインは時代を超えて愛され、まさにシーズンから解放されたものづくりといえるでしょう。
Cristaseyaの魅力は「引き算」のデザインアプローチでオーセンティックなものづくりをしているところ。
次の章でご紹介する「エキゾチック」のエッセンスも引き算的にデザインをととのえ、どんな人種、性別、年代の人にも合うものに昇華しています。
これにはスタイリストの経験も大いに生かされているように感じます。
ミニマルなものにエッセンスを加え、そしてそれを普遍的であるようにととのえるというのは並大抵のことではなく、彼女のキャリアに裏打ちされたスキルとセンス、そして情熱がそれを可能にしているのでしょう。
ミニマルかつエキゾチック
Cristaseyaのクリエイションを語る上で、Cristaseyaの洋服がもつエキゾチックさにも触れなければならないでしょう。
エキゾチックさとは、異国情緒という意味。
Cristaseyaの洋服はどこか異国の雰囲気をまとっているように感じます。
先ほどお伝えしたように、基本的には引き算の手法でミニマルに仕上げられていますが、よくよく見るとミニマルな中に文化的なコンテクスト(文脈)を感じることができます。
シーズンごとにインスパイアされる国や文化を変えながらエキゾチックな要素が取り入れられているのにも関わらず、それでいてCristaseya自身がもつベーシックなイメージはシーズンを超えて崩れることはありません。
ここでは、いくつかの例を挙げながらCristaseyaの異国情緒に触れてみましょう。
PADDED JACKET
ANDREA SPOTORNO
PADDING(中綿)がはいったジャケットで、同じ仕様のコートもリリースされています。
首元や裾のふっくらとした印象は日本のちゃんちゃんこや半纏を彷彿とさせます。
それでいながらミニマルでどこか西洋服らしさも感じる、絶妙なバランス感のもと成り立っているように感じます。
WASHI PAPER SWEATER
ANDREA SPOTORNO
Cristaseyaでは素材使いでもエキゾチックな要素が見られます。
定番でリリースされているニットは和紙が使われていて、ウールにはない独特のシャリ感とユニークなドレープ感を生み出しています。
和紙のほかにも会津木綿を使用したり、われわれ日本人としては異国情緒ではないのですがCristina Casiniさん含めヨーロッパの方たちからするとエキゾチックな雰囲気を感じるのでしょう。
MAO SHIRT
ANDREA SPOTORNO
定番でリリースされているマオカラーのシャツ。
マオカラーのルーツは日本の国民服だといわれていますが、日本人が馴染みのあるディテールであったかというとそうでもなく、むしろ諸外国が国民服に似せて作ったことがはじまりだとされています。
襟がないまさに引き算のデザインはCristaseyaらしさもあり、西洋シャツでありながらどこかアジア感もある秀逸なデザインだと思います。
2018年から行われているSalvatore PiccoloとのコラボレーションでもこちらのMAO SHIRTがリリースされており、Cristaseyaにとって大切にされている一着だということが伺えます。
CAFTAN DRESS
ANDREA SPOTORNO
こちらも定番アイテム。カフタンとは中央アジアのイスラム教文化圏でよく着られている民族衣装。中でもトルコでは最も代表的な民族衣装とされています。
胸元にスリットがはいったワンピースのようなデザインは気温が高い地域に適応するように作られたもので、直射日光から身体を守るための肌を覆う部分は多いものの、風をよく通すような仕立てで、合理的なつくりになっています。
Cristaseyaではさまざまな素材でリリースされていますが、いずれも色味、テクスチャともに西洋服然としていてミニマルコンフォートな印象のワンピースに仕上げています。
SANDAL
ANDREA SPOTORNO
岐阜のセレクトショップ「EUREKA FACTORY HEIGHTS」別注によるCristaseyaとJOJO ない藤のコラボレーションのサンダルです。
JOJO ない藤は祇園で代々続く履物メーカー。
雪駄をモダナイズしたようなデザインは、和装以外にも合う現代の新しいサンダルとしてとてもアイコニックなものとなっています。
Cristaseyaはそれをさらに西洋のエスプリと混ぜ合わせることでよりミニマルで普遍的な雰囲気に昇華させました。
PARÉO SKIRT
こちらもCristaseyaらしい一着。
パレオを普段着に落とし込んだスカートです。
パレオはタヒチの民族衣装であるパレウがルーツになっていて、パレオがもつリゾート感のある雰囲気だけでなく、伝統的な要素としても取り入れています。
通常カラフルで柄物のイメージが強いパレオですが、Cristaseyaではシャツなどとセットアップで着用したり、きちんとした印象のストライプの生地を使用したりと、日常に溶け込むよう工夫されています。
MOROCCAN PAJAMA PANTS
モロッコの民族衣装であるジュラバの下に履いているイージーパンツを彷彿とさせるパンツ。
ウエストはギャザー仕様になっていて、裾は風を通すため広くとられています。
Cristaseyaでは共生地のジャケットやシャツと合わせているルックがよく見られますが、本来の合わせ方でいえばカフタンと合わせたりしてもいいのかもしれませんね。
気温の高い地域で着られている洋服の「コンフォート」の要素をうまくエッセンスとしてCristaseyaに加え、それをミニマルに仕上げているような、そんな印象を受けました。
いかがでしょうか。
さまざまな国や地域からエッセンスを抽出して洋服に落とし込んでいることがよくわかりますね。
また、このほかにもEdition#14(2020 Spring/Summer)ではパリで暮らすアフリカンたちの自由な色使いやスタイリングにインスパイアされていたりと、まさにブランドのアイデンティティとしても大きな意味をなしているといえるでしょう。
ファッションとアート、写真を横断する
Cristaseyaのコンセプト、「ファッションとアート、写真を横断するライフスタイル・プロジェクト」の言葉どおり、Cristaseyaでは洋服以外にも陶器や本などもリリースされています。それらを手がけるのはCristina Casiniさんの公私を共にするパートナー、Andrea Spotorno(アンドレアスポトルノ)さん。
彼はフォトグラファーであり、Cristaseyaのルックの写真なども彼が撮影しています。
LOUIS VUITTONやHERMESのシューティングも手がける彼。最近ではMM6×Supremeの写真なんかも撮られていましたね。
陶器のキュレーションもおこなっていて、ギリシャの作家の作品などは日本でも販売されました。
Cristaseyaの「ファッションとアート、写真を横断する」というコンセプトは彼との関係性の中で生まれていったものでもあったのでしょう。
実際、Edition #18では彼がキュレーションした陶器たちとのルックがたくさん掲載されていました。
ANDREA SPOTORNO
また陶器のキュレーションだけでなく、彼が撮影したCristaseyaのルックを1冊にまとめた「Cristaseya 2012-2020」という本もリリースされています。
このように洋服だけでなく生活の中にさまざまな美観を提案しているCristaseya。
今後のクリエイション、キュレーションはどんなものを見せてくれるのか、とても楽しみです。
D’arte(ダルテ)で取り扱っているCristaseya(クリスタセヤ)の商品たち
D’arteにある商品を掲載しておきます。
ONLINE SHOPへのリンクも貼っておきますのでもし興味が沸きましたらアクセスしてみてください。
19AW Shoulder Patch 1 Yarn Camel Sweater ベビーキャメルショルダーパッチニットセーター / Cristaseya(クリスタセヤ)
17SS MAO SHIRT II BLUE NAVY STRIPES ストライプマオカラーシャツ / Cristaseya(クリスタセヤ)
19AW 袖切替エルボーパッチニットセーター / Cristaseya(クリスタセヤ)
コットンペーパーニットセーター / Cristaseya(クリスタセヤ)
21AW オーバーサイズドクラシックカラーシャツ / Cristaseya(クリスタセヤ)
21SS JAPANESE LINEN PYJAMA SHIRT リネンパジャマシャツ / Cristaseya(クリスタセヤ)
Cristaseya(クリスタセヤ)のお買取について
D’arteでは、ノームコアブランドの買取をおこなっております。
思い入れがあるけれど着ていない、使っていないお洋服などございましたら一度メールにてご相談くださいませ。
このコラムに辿りついて読んでくださった貴方のお持ち物に興味があります。
tekuhomme@darte.jp
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