frame france(フレームフランス)が時を越えて評価される理由
本日はframe franceについて。
近年注目があつまるヴィンテージフレームですが、その人気を牽引してきたもののひとつにframe franceの存在があります。
今回はそのframe franceの中でもセルロイド製のフレームに焦点を当ててご紹介したいと思います。
frame france(フレームフランス)とは
まず、frame franceとはどういったものなのかをご紹介します。
frame franceをブランド名だと思っている方もいるかもしれませんが、frame franceはブランド名ではなく、もともとは「フランス製のフレームであることをあらわす刻印」が由来です。
「Made in France」のような、生産地を示す印字ということですね。

刻印が入れられていた時期は1950~1970年代ごろとされており、その刻印がつくフレームの完成度が高く美しかったため後の時代にも評価され、結果的に「frame france」ということばがひとつのジャンルとして確立され、ある種「ブランド化」されることになったのです。
ではなぜそれほどまでにこの時代のフランス製の眼鏡が特別だったのでしょうか?
次の章からはframe franceの魅力について見ていきたいと思います。
視力矯正器具から装飾品へ

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その昔、目が悪い人は障がいのある人だとされていました。
眼鏡が生まれたことでその地位は向上することにはなりますが、物体を歪めて大きく見せるレンズというものは悪魔の力だと恐れられ、畏怖・軽蔑の対象となったこともあったようです。
ただ、ルーペとして貴族が持ち歩いたり、パンセネと呼ばれる鼻眼鏡が登場したりと徐々に社会にも浸透していくことになりますがそれでも眼鏡はまだ視力を矯正するための道具という位置づけでした。
眼鏡の素材はもともとは象牙や鼈甲、金属といったものが一般的でしたが20世紀初頭にセルロイドという新しい素材が登場したことで、眼鏡はただの視力矯正器具ではなく装飾品(ファッションアイテム)として一気に花開くことになります。
セルロイドは、天然素材と比べて柔軟で割れにくく熱で容易に曲げられるという特性があります。
また鼈甲などと違って厚みや透明度・色味も自由に調整できるため、これまでの素材では難しかった「柄」「透け感」「曲線」「立体構造」を思いのままに表現できるようになったのです。
セルロイドという素材の登場は世界中の眼鏡づくりに大きな影響をあたえることになりますが、中でもフランスでは化学反応ともいうべき革新が起こっていくことになります。
セルロイドという加工しやすい新素材を、フランスで発展した高い美的感覚によってデザインすることでまったく新しいかたちの眼鏡が生まれることになります。
それは眼鏡が単なる視力を矯正するための道具から顔を彩る装飾品へと移り変わる大きな転換点となったことでしょう。
セルロイドの魅力

frame franceの魅力の大きな部分としてセルロイド特有の質感があります。
ゼリーのような潤いを含んだぷるっとした生地感は他の樹脂では再現が難しく、まさにこの時代の眼鏡を象徴する要素です。
また色や柄の深みもすばらしく、1940年代ごろに見られる芯なし(テンプルの金属芯がない仕様)との相性は特に生地の深みが感じられます。

ただ、これほど魅力の詰まったセルロイドという素材ですが現在はセルロイド製の眼鏡はほとんど作られていません。
なぜ現代ではセルロイド製の眼鏡が作られなくなったのでしょうか?
作られなくなった最大の理由はセルロイド製造の危険性とそれに対する規制にあります。
セルロイドの主成分はニトロセルロース(硝化綿)です。
これは「火薬(無煙火薬)」と同じ化学構造を持ち、高温、摩擦、静電気など、わずかな刺激でも発火・爆発するリスクがあります。
実際に起きた事故例として、1950~1960年代のヨーロッパ(特にフランスやイタリア)のセルロイド加工工場で相次いで発生した火災・爆発事故があります。
セルロイドによる火災は一度引火すると消火が困難で、工場が全焼するまでに発展した事例が多発することとなりました。
これをきっかけに、欧州ではセルロイドの工業利用がほぼ禁止となり、それ以降セルロイド製の眼鏡づくりは衰退していくこととなります。

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現在でもREACH規制といったEUの安全基準でセルロイドの大量製造や保管はきわめて厳しい条件が課されており、小規模であっても保険や防火基準の面で採算が取れなくなったのです。
つまり、技術的には現代でも再現可能ですが、過去のさまざまな火災事故によって規制が厳しくなりほとんど作られることがなくなってしまったということですね。
今ではフランスの工場でさえも小規模でつくられている日本製のセルロイド生地を仕入れ、それを加工成型することでセルロイドフレームの眼鏡を作っています。
その分材料費が高くなり、また輸送費もかかることでどうしても高価なフレームになってしまうためほとんど見かけることがなくなってしまった、という背景があるのです。
現在はプラスチックフレームのほとんどは安全に生産・加工ができるアセテートが使用されており、セルロイドフレームはまさに時代の遺物となってしまいました。
時代を反映したディテール
frame franceは、その当時の国際情勢や時代を反映したディテールが見られるところも魅力のひとつです。
例えば1940年代以前に見られるテンプル部分に金属芯が入っていないディテール。
美しいセルロイド生地が、内部の芯がないことによってノイズがなくより綺麗に見えるディテールですが、これは当時の第二次世界大戦の影響で鉄などの物資が不足しており芯を入れることができなかったからだといわれています。

また、手仕事の割合が変わっていったようすもディテールから読みとることもできます。
ヒンジ(フロントとテンプルをつなぐ小さな金具)をカシメる(圧力でつぶして固定する)のは1960年代初頭まで、それ以降はフレームの溝にはめ込む形で工程を簡略化しています。

ヒンジのピン(リベット)の数についても変遷が見られます。
3dotと呼ばれる3つのピンで留めていたのが部材のクオリティ向上や量産化の煽りをうけて2つのピンになっていったり、留め方に関しても1940年代ごろはピンの裏側のカシメが綺麗に均されておりより意匠にこだわった仕様でしたがこれも簡素化されていきます。
このようにframe franceには20世紀以降の工業化・大量生産化の潮流と、それ以前から続く手仕事のこだわりが混じりあう中で生まれた、この時代でしか生まれ得なかった魅力があるのだと思います。
当時のモデルをモチーフにしたハイクオリティな眼鏡も現行でたくさんありますが、ヴィンテージフレームを楽しむ意味はこういった時代背景に想いをはせながら実物を手にとったりかけてみたりできるところにあるのではないでしょうか。
アイウェアの街、ジュラ

MAIDENS SHOP
ここまでたくさんのframe franceの魅力についてお伝えしてきましたが、ここからはそんなframe franceが生まれた地について見ていきましょう。
フランスの中でも眼鏡づくりが特に盛んな地域としてジュラという地域(日本でいう都道府県にあたります)があります。
Lesca(レスカ)やMaison Bonnet(メゾン・ボネ)などの生産もジュラで行っています。
特にジュラの中でもMorez(モレ)やOyonnax(オヨナ)という地域は眼鏡づくりの街として発展してきた歴史があります。
モレは金属フレームで有名な地域で、もともと時計部品や金属細工の職人が多く18世紀後半に時計職人たちが冬の副業として金属フレームを作り始めたことがきっかけだといわれています。

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オヨナももとは手工業が盛んな地域でしたが19世紀後半から特にプラスチック・セルロイド製造業が盛んになり、現在へと至ります。
frame franceの代表的なモデルたちの多くもこの街で作られています。

MAIDENS SHOP

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このように地域として長年生産をおこなってきたジュラですが現在では廃業している工場も多く、アトリエにそのまま残っていたものがデッドストックとして流通しています。
現代では生産が難しい(そして歴史的背景をふまえた)ヴィンテージセルロイドフレームはデッドストックで発見される量は今後減少する一方でしょう。
frame franceのものづくりや背景を知っていただいて、この時流が一過性のものとならず多くの人に永く愛されることを願います。
frame france各モデル解説
frame franceには名前がつけられたモデルがいくつか存在します。
どれもその時代だからこそ生まれた特徴的なモデルたちで、およそ80年前に誕生したとは思えないほどタイムレスな佇まいをしています。
いくつかご紹介いたしましょう。
Panto(パント)

やや縦長の丸みを帯びたレンズシェイプで丸眼鏡(ラウンド)と四角(スクエア)の中間に位置する形状です。
人の顔に自然になじむ万能形で、現代まで続く定番のモデルです。
特筆すべきはこの形状が80年前にすでに完成していたということでしょう。
Crown Panto(クラウンパント)
前述のパントに遊び心をくわえたようなモデル。なめらかな曲線のパントに対し、トップリム(フロントの上部)を鋭角にする事で引き締めています。
Parisian(パリジャン)
frame franceの王道ともいうべきモデル。
名前にフランスの都市名を冠したこのパリジャンは縦長で逆台形の玉型が印象的なモデルです。
パリジャンはアメリカの眼鏡メーカーTART OPTICALのFDRやARNELなど、その後のさまざまなモデルの源流であったと考察されており現在の眼鏡のスタンダードをかたちづくったモデルともいえます。
キーホールと呼ばれる鼻部分のくぼみを伴った独特の形状はクラウンパントやパリジャンによく見られ、全体の柔らかい雰囲気を引き締めてくれます。
Round(ラウンド)
時代を超えて愛されるモデル、ラウンドフレームです。
中でも特徴的なものをご紹介すると、Corbusier Round(コルビュジエ ラウンド)と呼ばれるモデルは建築家ル・コルビュジエが実際にかけていたモデルがあります。


大ぶりなラウンドフォルムのフレームは他のモデルのような鋭角なカッティングではなく丸みをともなったシェイプ。
星型のピンが特徴的で、他のラウンドフレームとも一線を画す佇まいです。
The Rock(ザ ロック)

アヴァンギャルドフレームの中でもカッティングの工数の多さ、複雑さが抜きんでているThe Rock。
多面多角的なフォルムはめずらしい斜めのカッティングによって作り出されており、正面から見たときのゴツっとした印象は角度を変えて見ると華奢な印象で繊細さを感じられる、奥ゆきのあるモデルです。
Gargoyle(ガーゴイル)

おそらくアヴァンギャルドのモデルの中でもっとも有名なのがこのガーゴイル。
ヨロイと呼ばれるテンプルとの接合部分が幅広で線の太さが特徴的なモデルです。
縦に2つ打たれたピンが離れ気味なのも少し抜けた感じがしてチャーミングな印象ですね。
CEBO社製のものだとこのピンが横並びのものもあります。
Norton(ノートン)

フレーム自体の形状は前述のガーゴイルとほぼ同じですが玉型(レンズのある部分)のかたちが左右でちがうモデルです。
眼鏡単体で見るとかなりインパクトが強いですがかけてみるとなぜか意外と顔になじむ、なんとも不思議なモデルです。
Night Ranger(ナイトレンジャー)

アヴァンギャルドさ全開のこのモデル。
The Rockとはまたちがう大胆なカッティングが特徴的なこのモデルは玉型も独特なオーバル(楕円)型でかなり印象が強めです。
現代のわれわれが見ても個性的なこのナイトレンジャーですが、このモデルが生まれた当時はまだ眼鏡がファッションアイテムだという風潮は今ほどなかったことでしょう。
その中でこれを作った職人のアヴァンギャルド(前衛)を突きつめる姿勢は見習うべきところがありそうです。
Gallo(ギャロ)

ドロップ型ですがフロントの線は細めで顔になじむモデル。
パドルテンプル(太めのテンプル)に芯なしのディテールが映える一本です。
歴代最高といわれた火が燃えているようなデミアンバーカラーの柄の生地が使われている個体が存在しており、まさにマスターピースというべきモデルでしょう。
Cat Eye(キャットアイ)

こちらは主に1960年代に作られたモデル。
名前のとおり猫の目のように横長なオーバル型で、レンズの外側だけフレームが太くなっています。
外側が太いことでより横に長く、つり目な印象に見えますね。
このコラム内ではあまり紹介できませんでしたが1960年代以降のframe franceはよりアヴァンギャルドで見たことのない、近未来感のあるモデルが作られていきます。
その中でもCat Eyeは近年のY2Kファッションとの相性の良さもあり、注目が集まっているモデルでもあります。
D’arte(ダルテ)で取り扱っているframe franceの商品たち








1950’s-1960’s CORBUSIER STYLE PERFECT ROUND コルビュジエラウンド セルフレームアイウェア 眼鏡 46/26 / frame france(フレームフランス)

1960’s CORBUSIER TELEVISION ROUND セルフレーム アイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)

1940’s Gallo セルフレーム メガネ アイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)SOLD OUT

1940’s Crown Panto 3dots クラウンパントセルフレーム メガネ アイウェア / frame france(フレームフランス)

frame france フレームフランス 1940’s 芯なしクラウンパント サングラス アイウェア 眼鏡 ハニーSOLD OUT

1940’s 芯なしクラウンパント セルフレームアイウェア 眼鏡 ローズ / frame france(フレームフランス)
SOLD OUT

1940’s 芯なしクラウンパント セルフレームアイウェア 眼鏡 ローズ / frame france(フレームフランス)
SOLD OUT

1940’s 芯なしクラウンパント セルフレームアイウェア 眼鏡 クリア / frame france(フレームフランス)

1950’s クラウンパント パドルテンプル アイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)

1940’s Parisian パリジャン 3dots セルフレーム アイウェア 眼鏡 ハニー / frame france(フレームフランス)

1940’s 芯なし アヴァンギャルドセルフレームアイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)

1950’s the Rock セルフレームアイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)SOLD OUT

1950’s gargoyle ガーゴイル セルフレームアイウェア 眼鏡 ブラック / frame france(フレームフランス)

1950’s gargoyle ガーゴイル セルフレームアイウェア 眼鏡 ブラウン / frame france(フレームフランス)

1950’s Night Ranger セルフレームアイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)
1950’s Norton セルフレームアイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)SOLD OUT

1950’s Cat Eye オーバルラウンドセルフレームアイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)
SOLD OUT

1950’s Aviator アビエイター セルフレームアイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)

1950’s avant-garde アヴァンギャルド セルフレームアイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)

1940’s Parisian パリジャン 芯なし セルフレームアイウェア 眼鏡 ローズ / frame france(フレームフランス)SOLD OUT

1940’s Parisian パリジャン 芯なし セルフレーム アイウェア 眼鏡 イエロートートイズ / frame france(フレームフランス)
SOLD OUT

1940’s Parisian パリジャン 芯なし セルフレームアイウェア 眼鏡 イエロートートイズ / frame france(フレームフランス)

1950’s Parisian パリジャン セルフレームアイウェア 眼鏡 ローズ / frame france(フレームフランス)

1950’s Parisian パリジャン セルフレームアイウェア 眼鏡 イエロークリア / frame france(フレームフランス)SOLD OUT

1950’s Round Parisian ラウンドパリジャン アイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)
SOLD OUT

1950’s Parisian ボストンセルフレームアイウェア 眼鏡 クリア / frame france(フレームフランス)
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1950’s ボストンフレームアイウェア 眼鏡 グリーン / frame france(フレームフランス)
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1940’s ボストンクラウンパント セルフレームアイウェア 眼鏡 コニャック / frame france(フレームフランス)
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1950’s FIDELA社 ウェリントンセルフレームアイウェア 眼鏡 ブラウン / frame france(フレームフランス)

1950’s アヴァンギャルド ウェリントンセルフレームアイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)

1950’s Wellington セルフレームアイウェア 眼鏡 ダークグリーン / frame france(フレームフランス)
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1950’s ドロップ セルフレームアイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)

1950’s パント ラウンドセルフレームアイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)

1950’s Panto パントセルフレームアイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)

1950’s パント ラウンドセルフレームアイウェア 眼鏡 クリア / frame france(フレームフランス)

1950’s ラウンドセルフレームアイウェア 眼鏡 ブラック / frame france(フレームフランス)

1950’s クリアラウンドセルフレーム アイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)
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1950’s ラウンドセルフレームアイウェア 眼鏡 ハニー / frame france(フレームフランス)

1950’s K18GF ゴールドフレームラウンド アイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)
SOLD OUT

1950’s FIDELA社 セルフレーム アイウェア 眼鏡 ボルドー / frame france(フレームフランス)

1950’s ドロップセルフレームアイウェア 眼鏡 ローズ / frame france(フレームフランス)

1960’s LOTTET GOLF アビエイター メタルフレームアイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)
SOLD OUT

1960’s オクタゴンメタルフレームアイウェア 眼鏡 / frame france(フレームフランス)
frame france(フレームフランス)のお買取について

D’arteでは、frame franceの買取をおこなっております。
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