本日はイタリアのアルチザンブランド「LAYER-0(レイヤーゼロ)」について。
日本では取り扱いが数店舗と限られており、目にする機会も少ないLAYER-0ですがセカンドスキン(第二の皮膚)的なアプローチ満載の素晴らしいブランドです。
セカンドスキンとはどういった考え方なのか。
そしてLAYER-0はそのセカンドスキンにどのようにアプローチしているのか。
このあたりについて一緒に見ていきましょう。
LAYER-0(レイヤーゼロ)について
デザイナーはAlessio Zero(アレッシオ・ゼロ)。
イタリアはペルージャを拠点としたブランドです。
LAYER-0ではパターンメーカーの経験を活かして、テーラリングのテクニックを用いて独創的な服づくりを行っています。
パターン、立体構造などのフォルム面と生地や縫製処理などのテキスタイル面。
両方での革新的なデザインは他のブランドと比較しても目を見張るものがあります。
そしてなんと言ってもLAYER-0(無層)の名前のとおり、セカンドスキン(第二の皮膚)的なアプローチで服づくりをおこなっているブランドです。
ではそのセカンドスキンとはなにか?どんなアプローチをおこなっているかを具体的に見ていきましょう。
身体を纏う”第二の皮膚”
セカンドスキンとはその名のとおり”第二の皮膚”を目指すアプローチのことです。
・皮膚のように身体を覆い、外部の刺激から身を守る。
・柔軟に身体を覆って運動を妨げない。
・肌に継ぎ目がないように弱点をなくし壊れにくくする。
このような要素を満たすようパターンを工夫したり、素材選びをおこなったりするわけですね。
ストリートやモードと同じように「アルチザン」もジャンルとしてくくられがちですが、アルチザンというジャンルはスタイルではなくセカンドスキンのような思想・哲学をベースにできています。
ビジュアルのジャンル分けとはまたちょっと違うわけですね。
ではここからはLAYER-0が実際にどのようなアプローチをおこなっているかを見ていきましょう。
スキマを作らないパターンメイキング
これはなにもタイツのような服を作る、というわけではありません。
運動量の大きい箇所にはスキマを作らない工夫をしているということです。
脇部分や股部分などは可動域が大きく、生地のゆとりをとると動いたときに生地を引っ張ってしまって運動を妨げてしまいます。
腰履きしたパンツが股を開きにくいのを想像してもらえればわかりやすいかもしれません。
そして引っ張るということは破れる(壊れる)原因にもなってしまいます。
これを防ぐためスキマを作らない構造になっているわけですね。
強度のある素材選び
運動量を確保するためできるだけ身体に沿ったつくりにするわけですが、皮膚に近づけるためには壊れやすい素材ではだめです。
LAYER-0の素材はヘビーキャンバスのヘンプやハイカウントジャージー、ホースレザーなど強度のあるものをメインに使用しています。
こうすることで皮膚を守る「鎧」の役割を果たせるわけですが、次は別の問題が浮上します。
強度のある生地は硬くて動きにくいんですね。
しかも先述したように身体に沿ったスキマのないパターンで作られているので余計に動きにくくなってしまいます。
それを解消するためにLAYER-0はさまざまなアプローチを行っています。
ディテールの解説とともにアプローチをいくつか見ていきましょう。
動きを妨げないディテール
ジョイントプリーツ
肘や膝など関節部分にあらかじめ入れられたシワ。
これがあることで曲げ伸ばしの際にかかる負荷をおさえることができます。
曲がるストローの蛇腹を想像してもらえたら分かりやすいですかね。
※私が名づけた名前なので正式名称ではないですあしからず!
フリーダムスリーブ
脇部分が細くなると肩まわりの運動量の確保が必要になりますが、フリーダムスリーブという通常のラグランよりシームを外側に持ってきた構造にすることで生地に負荷がかかる箇所からシームを逃がしています。
ヴィンテージのスウェットなどによく見られるディテールですね。
さらにこのフリーダムスリーブでとることで肩にセットインスリーブのようなシームの線が入ります。
これがあることでラグラン特有の柔らかすぎる印象をなくし、コートやジャケットなどの重厚な雰囲気を演出することができます。
動きやすく、壊れにくくする効果とツラ感をよりよく演出する効果をひとつのディテールが果たしていますね。
ガゼットクロッチ
LAYER-0のパンツの中でもW.P PANTSなどのモデルは股下がガゼットクロッチになっています。
ガゼットクロッチとは主にアウトドアやスポーツ向けの洋服にあしらわれた股下の補強パターンのことです。
股下は開脚にともなって最もダメージが入りやすい箇所。
ガゼットクロッチにはそこに運動量を補いつつ、ダメージ箇所からシームを逃がす役割があります。
アウトドアのディテールを盛り込んだ、というよりはセカンドスキン的に適切なアプローチをしたらこういったディテールが盛り込まれたのでしょうね。
LAYER-0(レイヤーゼロ)のモデル一覧
ここまではLAYER-0のセカンドスキン的な服づくりに対するアプローチをお伝えしてきましたが、ここでは実際の各モデルを見ていきたいと思います。
H BLAZER
ノッチドラペルの3ボタンのテーラードジャケット。
袖には曲げ伸ばしをしやすくするためあらかじめシワ加工が施されています。
先述したジョイントプリーツですね。
レザーを重ね合わせて作られた楕円形のボタンは留めやすく外れにくい仕様になっています。
(滑りはそんなによくないので若干入りにくいですが、笑)
ちなみにジャケット類は何度かパターンが変わっています。
2012SS以前は肩甲骨まわりを一枚の生地が覆うようなパターン。
2012AW~2014SSは背中で3枚に分かれたパターン。
2014AW以降が現在のこのパターン、という風になっています。
運動を妨げない&壊れにくいパターンを探究し続けているのが伺えますね。
LONG H BLAZER
先ほどのH BLAZERのロングタイプ。
こちらもシーズンによってパターンが異なります。
こちらは初期のパターン。先ほどの2012SS以前のパターンと並行して作られていたようですね。
シーズンとしては2011AWのものになります。
いわゆる一般的なセットインスリーブ。
ですが立体的に作られているので窮屈さや動きづらさを感じません。
こちらのコートはお取り扱いがあります。
詳しくはこちらをご覧ください。
11AW LONG H BLAZER コットンチェスターコート / LAYER-0(レイヤーゼロ)
EXCRUSIVE COAT
神戸のセレクトショップ「Liberte(リベルテ)」さんのExcrusiveモデル。
フリーダムスリーブやジョイントプリーツなどLAYER-0の基本的なディテールは同じですがショールカラーになっていたりフラップポケットになっていたりとアーバンユースにも使えるチェスターコートになっています。
こちらは販売もしているのでご興味ある方はこちらで詳しくご紹介しています。ご覧ください。
18AW Excrusive ショールカラーストライプコート / LAYER-0(レイヤーゼロ)
H JACKET
シングルジップのブルゾン。
写真はホースレザーですがヘンプなどの布帛ものもあります。
先ほどの年代判別の補足ですが、このモデルも同じように年代によってパターンが異なります。
加えて古いモデルはジップの務歯がシルバー×黒の配色になっています。
サイドジップブーツなどのジップも同様ですね。
ホースレザーのH JACKETはこちらで購入することもできます。
17AW H JACKET ホースレザージャケット / LAYER-0(レイヤーゼロ)
SWEATER
ジャケット類のフリーダムスリーブよりはゆるい角度の袖つけ。
脇下だけパターンが切り替えられていてそのまま袖までつながった構造になっています。
ニットなので伸縮を考慮して壊れにくい構造にしてあるんですね。
結構細身なつくりなので人を選ぶ部分もあるかな、と個人的には思います。
5P PANTS
ベーシックな5ポケットパンツ。
前ポケット2つとコインポケット、後ろポケット2つの計5つです。
丈は少し長めでブーツなどに被せることもできますしロールアップしてダービーシューズとも合わせることができます。
使いやすくて履きやすいので個人的にヘビーローテーションしているパンツでもあります。
ただ履きすぎて丈夫に作っているはずの股下がシームを避けて破れました。(歩き方が悪いのかどのパンツも大体ここがいつも壊れます)
ミシンで叩いて修理したのでまだまだ現役です。
W.P PANTS
W.Pとは「Welt Pocket」の略です。
ポケットがウェルトポケット(飾り縁のついたポケット)になっています。
シルエットはテーパードクロップド、股下はガゼットクロッチ仕様になっています。
W.P PANTSもD’arteで在庫があるので気になった方はこちら見てみてください。
17AW W.P PANTS ハイカウントコットンツイルパンツ / LAYER-0(レイヤーゼロ)
A.P PANTS
A.Pは「American Pocket」の略。
デニムのようにラウンドカーブしたポケットがつけられています。
基本的なところはW.P PANTSと同じですが少しワイドめな印象です。
h1
定番のハット。
素材はホースレザーやヘンプ、両方を使用したコンビなどもあります。
トップからブリムまでを一枚でとった流線形のパターンが特徴的で、ユニークなつくりなのに使いやすくいろいろなコーディネートにハマる優秀なハットです。
ブリムがもう少し広いh2というモデルもあります。
写真のh1についてはこちらでご紹介&販売しております。
16SS H2 ヘンプカーフレザーハット / LAYER-0(レイヤーゼロ)
H7
定番のダービーシューズ。
素材は基本的にコードヴァンが使われます。
ジョイントプリーツ的発想でアッパーにはあらかじめ深い履きジワがつけられています。
おろしたてでも履きやすいのが特徴ですね。
ヒールソールに溝が掘ってあり、靴紐を下側にとおして履くことができます。
H10
H7のミドルカットバージョン。
くるぶし上の丈感でW.P PANTSなどのクロップドパンツとよく合います。
こちらは足首に巻きつけるように靴紐を結びます。
H12
コードヴァンのスニーカー。
私が履いたレザーの靴の中でもトップクラスに履きやすかったです。
タンのクッションとしなやかなコードヴァンが程よいホールド感で履いていてストレスがぜんぜんありませんでした。
こちらもH10と同じように靴紐を足首に巻きつけて結びます。
ちなみに後ろ側に突起がついていて、結んだ靴紐が浮いてしまわないようひっかける役割をになっています。
このディテールは2016SS以降のスニーカー(H10とかにも)につきます。
つまりこのスニーカーは2016SS以降のものということですね。
こちらのスニーカーも出品しています。もう少し詳しく知りたい方はこちらを読んでみてください。
H10 コードヴァンレザースニーカー / LAYER-0(レイヤーゼロ)
ちなみにローカットタイプもあります。こちらはH8という品番です。
まとめ
「セカンドスキン」的なアプローチで革新的なものづくりをおこなうLAYER-0。
素材や縫製も、他のアルチザンブランドと近いようで一線を画すそのクリエイションはさらに進化を続けていることが窺い知れました。
できることであれば実物を見て、そして着てみてほしい。そんなブランドです。
LAYER-0(レイヤーゼロ)のお買取についてD’arteでは、アルチザンブランドの買取をおこなっております。
思い入れがあるけれど着ていない、使っていないお洋服などございましたら一度メールにてご相談くださいませ。
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