the Crooked Tailor(ザ クルーキッドテーラー)とは
デザイナーは中村冴希氏。デザインだけでなくテーラリング(仕立て)・カッティング(裁断)も行う、まさに仕立て屋です。
2013年の秋冬からブランドとしてスタートし、現在に至るまで一貫したコンセプトで服づくりをおこなっています。
ブランド名は直訳すると「ひねくれた仕立て屋」。
いわゆるスーツテーラーではなく、単なるファッションブランドでもない。
今日はそんなthe Crooked Tailorについて一緒に見ていきましょう。
ハンドメイドとマニュファクチュア
the Crooked Tailorの特徴といえばやはり手仕事の量の多さ。
生産効率を優先しないクオリティファーストな姿勢は洋服に対するリスペクトを感じます。
the Crooked Tailorは大きく4つのラインに分かれ、Hand made(ハンドメイド)、Pret-a-porter(プレタポルテ)、Pattern order(パターンオーダー)、Royal order(ロイヤルオーダー)と種類があります。
この中でもセレクトショップに卸されているのは基本的にはプレタポルテラインだけなので、私たちが普段目にする機会が多いのはこのラインになるでしょう。
ハンドメイドラインはWolf&Wolff(旧ATELIER)での展開がありますが、定常で入荷しているものではないので見かける機会は少なくはなります。
パターンオーダー、ロイヤルオーダーは以前聞いた話だとオーダーが多く、一旦新規オーダーをストップしているようでしたが現在はどうなんでしょうか。
ハンドメイドラインのアイテムはお店をしていて何度か入荷したことがありましたが、やはり手仕事の量とクオリティに驚かされます。
ハンドメイドラインのタグ
the Crooked Tailorの洋服を見てみると、表の見える箇所を手縫いで仕上げるといったある種「装飾」のハンドメイドではなく、裏側の見えない箇所まで丁寧に仕上げられている「仕立て」のハンドメイドであることが分かります。
例えばトラウザーズなんかは股部分の割縫いも、その端のロックなども手縫いです。位置によって微妙に縫いのテンションを変えることで壊れにくく、軽く仕立てることができますが表側にステッチが出るようなデザイン性の高いディテールではありません。
ただの記号としてハンドメイドということばを使っていないということが洋服をとおしてきちんと伝わります。
緻密にひねくれる
ブランド名にもなっている「ひねくれた仕立て屋」。
ひねくれ、というと素直でなかったり考え方が曲がっていたりという言葉の印象を受けますがthe Crooked Tailorのひねくれ方はとても繊細で緻密なように感じます。
例えばこのジャケット。
ダーツに注目していただきたいのですが、現代のスーツの仕立てではまずやらないようなパターンメイキングになっています。
肩の後ろ側から大きくラウンドして背中中央に降りてくるダーツと、脇下からゆるやかなカーブを描くダーツの2種類がわかりますでしょうか。
そう、このジャケットは背面が6枚のパターンで構成されているのです。
パターン枚数を多くすることでより身体に沿わせて立体的なフォルムを作り出しています。
ただ、ダーツなどシーム(縫い目)が多くなると個性的なパターンの洋服になってしまい、どうしてもアクが強くなってしまいがちです。
m.a+やCarol Christian Poellのようなパターンメイキングで魅せるブランドであればアナトミカルなパターンも魅力なのですが、スーツを立体的に仕立てたい、というアプローチであればシームを大胆に魅せすぎるのは印象がそれに持っていかれてしまいます。
the Crooked Tailorのすごいところはこれをチェックの生地の柄合わせでシームを目立たなくしている点。
グレー地に赤チェックの柄が印象的で、しかもそれがパターンが切り替わってもきちんと合わせているので言われないと複雑なパターンだと気づきません。
裾部分もベント部分の2枚+サイドの生地、合計4枚パターンになっています。
角度をかなりつけているのでさすがに真ん中あたりは完全な柄合わせとはいきませんが、身頃の端なんかはチェックの線が完全につながっていてとても美しいです。
しかもこのサイドの生地は前面の生地からサイドシームで分けずに持ってきていたはずなので、より柄合わせの難易度が上がるのにも関わらずこれだけ綺麗に仕上げているのは仕立て屋としての高い技術を感じます。
ここまでの個性的なパターンを落ち着いたツラのジャケットに落とし込むのは至難の業でしょうし、そもそも仕立て屋としてこういった方向性で服を作るということ自体、かなりひねくれているということなのでしょう。
ひねくれの中にも高い技術と緻密さ丁寧さが隠れていて、ブランド名にも奥深さを感じることができますね。
テーラリングの「匂い」
the Crooked Tailorのアイテムは大別すると、1950年代あたりのヴィンテージ古着からインスパイアされたもの(ワークやミリタリー)と、19世紀の雰囲気が感じられるクラシックな洋服からインスパイアされたものがあるように感じます。
特にミリタリーアイテムに関しては、幅広い年代・国の軍モノがインスパイア元になっていて毎シーズン少しずつ新型がリリースされるのでとてもおもしろいです。
具体的なアイテムは次の章でたくさんご紹介するとして、ここではそれらのアイテムに共通するテーラリングの「匂い」について見ていきたいと思います。
まず、代表的なものとしてマニカカミーチャが挙げられます。
マニカカミーチャ(manica camicia)とは日本のテーラー用語では「雨降り袖」といわれるもので、袖付けの際にギャザーを寄せながら縫い合わせる技法です。
直訳すると「シャツの袖」という意味なのですが、本来はテーラーシャツに見られる技法をジャケットやコートに応用したもので、細かく柔らかいギャザーが美しく、分量もとれるので動作性も上がります。
the Crooked Tailorはこの技法を巧みにアイテムに取り入れているため、古着のアイテムであってもどこか上品さを纏った雰囲気になるのですね。
そのほか、現代のスーツシルエットとはちがったAラインのパターンメイキングであったり、クラシックさの香りづけがとても上手です。
このベースがあるからこそ、もう一つのthe Crooked Tailorの特徴である洗いざらしたシワシワの生地感がミックスされても土臭くなりすぎず、現代服としてもうまくはまるのでしょう。
the Crooked Tailor(ザ クルーキッドテーラー)のアイテム一覧
ここではthe Crooked Tailorのアイテムをご紹介します。
先述した「ヴィンテージ」と「クラシックな紳士服」のデザインソースをもとにカテゴリを分けてご紹介していこうと思います。
そのほかアイテムとしてシャツや帽子なんかはたくさん種類があるのでそちらはアイテムカテゴリでご紹介します。
ヴィンテージからのインスパイア
Pea coat(ピーコート)
Hunting jacket(ハンティングジャケット)
Military jacket(ミリタリージャケット)
Atelier jacket(アトリエジャケット)
Fireman trousers(ファイアマントラウザーズ)
British motorcycle coat(ブリティッシュモーターサイクルコート)
French motorcycle coat(フレンチモーターサイクルコート)
Safari Jacket(サファリジャケット)
French work trousers(フレンチワークトラウザーズ)
Gurkha trousers(グルカトラウザーズ)
Long anorak(ロングアノラック)
Fishing jacket(フィッシングジャケット)
Field jacket(フィールドジャケット)
Painter jacket(ペインタージャケット)
Rain Coat(レインコート)
Big mac coat(ビッグマックコート)
Driving coat(ドライビングコート)
Utility jacket(ユーティリティジャケット)
Long balmacaan coat(ロングバルマカーンコート)
Duffle coat(ダッフルコート)
Field parka “M-65″(フィールドパーカ)
Combat jacket(コンバットジャケット)
Jungle shirts jacket(ジャングルシャツジャケット)
French military trousers “M52-50′s”(フレンチミリタリートラウザーズ)
クラシックな紳士服からのインスパイア
Hook vent coat(フックベントコート)
Hook vent Jacket(フックベントジャケット)
Tent line coat(テントラインコート)
Round collar jacket(ラウンドカラージャケット)
Manica camicia jacket(マニカカミーチャジャケット)
Sack coat(サックコート)
Short peaked lapel tailor collar jacket(ショートピークドラペルテーラーカラージャケット)
French jacket(フレンチジャケット)
Short evening coat(ショートイブニングコート)
Under pants type trousers(アンダーパンツタイプトラウザーズ)
4-button jacket(4ボタンジャケット)
the Crooked Tailor(ザ クルーキッドテーラー)のシャツ
シャツの名称は法則があり、「襟の形」→「丈の長さ」→「モデル」というふうに組み合わせて出来上がります。
例えば襟の形がレギュラーカラーの丈の長いワークシャツであれば「Regular Collar Long Work Shirts」といった具合です。
ただし、襟の形とシャツのモデルはすべての組み合わせの商品が作られているわけではありません。
Cook Shirtsなどは襟の形の名称がつかず「Cook Shirts」のみです。
襟の形
Wide collar(ワイドカラー)
Regular collar(レギュラーカラー)
Round collar(ラウンドカラー)
Stand collar(スタンドカラー)
Shawl collar(ショールカラー)
Narrow collar(ナローカラー)
Wing collar(ウイングカラー)
Henley neck(ヘンリーネック)
Button-down collar(ボタンダウンカラー)
これらはシャツの襟の種類でしたがジャケットやコートになると
Tailor collar(テーラーカラー)
Short peaked lapel tailor collar(ショートピークドラペルテーラーカラー)
Fish mouth lapel(フィッシュマウスラペル)
Soutien collar(ステンカラー)
などの種類があります。
シャツの種類
Shirts(シャツ)
Classic Shirts(クラシックシャツ)
Classic Dress Shirts(クラシックドレスシャツ)
Put on a head Shirts(プットオンアヘッドシャツ)
Work Shirts(ワークシャツ)
Cook Shirts(コックシャツ)
“Y” yoke shirts(Yヨークシャツ)
sleeping shirts(スリーピングシャツ)
Sweater shirts(セーターシャツ)
Over Shirts(オーバーシャツ)
Polo Shirts(ポロシャツ)
Sailor shirts(セーラーシャツ)
Pocket “T” shirts(ポケットTシャツ)
Box Shirts(ボックスシャツ)
写真がない文字列ばかりにお付き合いいただきましてありがとうございます。
さいごにD’arteに入荷のあったもので写真があるものをいくつかご紹介しておきます。
16SS Regular Collar Classic Dress Shirt クラシックシャツ / the Crooked Tailor(ザ クルーキッドテーラー)
16SS French Motorcycle Coat モーターサイクルコート / the Crooked Tailor(ザ クルーキッドテイラー)
Albiniリネンチェックシャツ 46 / the Crooked Tailor(ザ クルーキッドテーラー)
14AW Out Pockets Trousers ウールコットントラウザーズパンツ / the Crooked Tailor(ザ クルーキッドテーラー)
19AW Big Mac Coat ステンカラーコート / the Crooked Tailor(ザ クルーキッドテーラー)
19AW 4-button jacket ウールヘリンボーンジャケット / the Crooked Tailor ザ クルーキッドテーラー)
19AW drawcord two tuck trousers ウールヘリンボーントラウザーズパンツ / the Crooked Tailor(ザ クルーキッドテーラー)
18SS Painter Jacket リネンペインタージャケット / the Crooked Tailor(ザ クルーキッドテーラー)
21SS Polo Shirts ポロシャツ グリーン / the Crooked Tailor(ザ クルーキッドテーラー)
リネンコットントラウザーズパンツ グレー / the Crooked Tailor(ザ クルーキッドテーラー)
Regular Collar Classic Shirts クラシックシャツ / the Crooked Tailor(ザ クルーキッドテーラー)
シワコットントラウザーズパンツ / the Crooked Taliored(ザ クルーキッドテーラー)
the Crooked Tailor(ザ クルーキッドテーラー)のお買取について
D’arteでは、アルチザンブランドの買取をおこなっております。
思い入れがあるけれど着ていない、使っていないお洋服などございましたら一度メールにてご相談くださいませ。
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tekuhomme@darte.jp
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