本日はC DIEM(カルペディエム)について。
20年以上前に生まれたある種伝説のブランド。
ブランドが休止してもなおその影響力は大きく、カルペディエムと出会ってファッションの価値観が大きく変わった、という人も少なくないでしょう。
今回はそんなカルペディエムがファッションの世界にもたらしたものとその影響について探っていきましょう。
C DIEM(カルペディエム)について
さっくりとブランドの説明を。
デザイナーはMaurizio Altieri(マウリツィオ・アルティエリ)。
ブランド名はラテン語。紀元前1世紀の古代ローマの詩人であるホラティウスの詩に登場する語句「その日を摘め」が由来になっています。
1994年からスタートしたカルペディエムですが、わずか12年後の2006年にブランドの休止を発表することとなります。
このあたりの要因については諸説あるので私から書くことはありませんが、原因はどうあれカルペ休止を嘆く声は多く、休止後もカルペディエムのクリエイションが高く評価されていきます。
いわゆるアルチザンブランドとはえてして熱狂的なファンを多く持ちますが、カルペは特にその傾向が著しくあらわれました。
では一体何がそれほどまでに人々を惹きつけたのか。
次の章ではカルペディエムがもたらしたものについて見ていきましょう。
新しい価値観を生んだものづくり
カルペディエムがのこした最大の功績のひとつに「新しい価値観をつくった」ということが挙げられます。
現在の多くのものづくりにもこの価値観が根ざしているといえるでしょう。
それは「退廃の美」。
当時、高価な洋服といえば装飾美や洗練されたシンプルな美、などが一般的でしたがカルペディエムが作り出したのは真逆の価値観。退廃的なものの中に見出だす美しさでした。
シワシワのレザー、腐食したようなオーバーダイ…
これらはビジネス的に時代の虚を衝(つ)いたのではなく、マウリツィオ氏の長い旅での経験やライフスタイルが反映されたのだと思います。
ファッション業界の常識から逸脱した存在だった彼だからこそできたクリエイションだったのですね、
もちろんカルペディエムだけがこの価値観を持っていたのかというとそういうわけではないでしょう。
時代のうねりがあって、そこから生まれた価値観だったのは間違いありません。
ただ、それを世界観にして提案し、手にとれる形で見せたという点では現在まで高い評価を得ているのもうなずけます。
セカンドスキンの概念
たびたび私のコラムでも登場するセカンドスキン。
「第二の皮膚」という直訳どおり、肌をめざしたアプローチですがこの考え方の波及もカルペディエムによるところが大きかったでしょう。
丈夫な生地で細身なフォルム(身体に沿ったシルエット)をつくりだしたり、通常より長めにとられた丈を関節部分にシワをつくり溜めることで動きやすくしたりと肌の上にもう一層堅牢な肌が乗ったような構造の洋服は当時としては稀有でした。
流行の最先端を追い求め着飾るでもなく、ワードローブを目指すわけでもなく、「身体」を表現するかのようなアプローチは見た目のインパクト以上に異質なものだったでしょう。
この異質さは当時の人々を虜にし、そしてそのある種の哲学は現在の服づくりにも影響を与えていくこととなります。
受け継がれるDNA
そんなカルペディエムが現在まで伝説として語り継がれるのはその遺伝子が今も多くのブランド(クリエイター)に受け継がれていることも要因のひとつでしょう。
カルペディエム休止後、ブランドに関わっていた人たちはそれぞれ自身のブランドを立ち上げはじめます。
それぞれのブランドは一見するとカルペイズム全開というわけではありません。
が、根本の部分にはその哲学がしっかりと根づいています。
LABEL UNDER CONSTRUCITON、m.a+、marvie lab、individual sentiments、wjk、SARA LANZI…
彼ら/彼女らもまた、カルペイズムをつくった人たち。
カルペの哲学はそのままに、そこからさまざまなアプローチが生まれ派生していくことになります。
それらのクリエイションはどこか退廃的で、過装飾のない不思議な奥ゆかしさをもちます。
「アルチザン」と聞くと一般的にイメージする世界観の正体はこのDNAによるところが大きいのではないかな、と思ったりします。
C DIEM(カルペディエム)のラインについて
カルペディエムには複数のラインが存在しました。
ここではそのラインについてご紹介しましょう。
ちなみにカルペ休止後にマウリツィオ氏が手がけていた別ブランドにも触れていますのでそちらもご覧ください。
LM ALTIERI(LMアルティエリ)
マウリツィオ氏の息子の名前を冠したライン。
布帛(ふはく)ものを中心としたブランドとして1999年よりスタートしました
カルペ定番のウォッシャブルレザーシャツをヘビーリネンで作ったりと、カルペのアイテムのアップデートも見られました。
細やかな縫製技術や見たことのない縫製処理方法。
わくわくするようなディテール満載のLM ALTIERIですが、その最大の特徴はなんといっても他に類をみない生地たち。
こちらのパンツなんかはワックス加工を施したテント生地を使用しています。
パターン取りの場所によって色が異なることを逆に利用し、退廃的な生地ですがチャーミングに仕上げています。
LM ALTIERIといえば他にもコートも有名ですね。
こちらもさまざまな生地のタイプが存在します。
パンツもコートも、(紹介していませんがカットソーなども)デザイン自体はとてもシンプルで普遍的なものばかり。
その普遍的なかたちをベースに、ユニークな生地で色どりを加えています。
LINEA PROJECT(リネアプロジェクト)
より狂気じみた発想と、それを可能にする卓越した技術をもってつくられたカルペの中でも特別なラインです。
現m.a+(エムエークロス)デザイナー マウリツィオ・アマディ氏も関わっていたとされ、その後のクリエイションにも影響を与えています。というよりエムエークロスのものづくりの原点、という方が適切でしょうか。
私が以前買い取って実際に見たことのあるものでいうと、
・セルビッチを継いでつくられた一点もののブルゾン
・塩漬けのレザーによってつくられたパンツ
・数年間砂に埋めて加工したレザーによってつくられたパンツ
・泥で加工した布帛によってつくられたコート
など、字面でもその異質さが伺えます。
これらは先述した新しい価値観の創造の最たる例であり、ファンだけでなくクリエイター側にもひとつの方向性(の終着点)を提示したようなプロダクトでした。
現在までにさまざまなアプローチでの洋服が多くのブランドからうまれましたが、それらを振り返って見ても一際異彩を放っていることは間違いないでしょう。
SARTORIA(サルトリア)
LINEA PROJECTよりもさらに限られたショップでしか見ることができなかったSARTORIA。
よりセカンドスキン(セカンドボディとも謂われます)の概念を追求したラインで、着用する人それぞれの身体に合うようにオーダーメイドで設計された服たちはもはや洋服のカテゴリを超越したといっても過言ではないでしょう。
ディテールもそれを裏付けるかのようにシームにハンドステッチでアルファベットが記されていたりとこれでもかというくらいの狂気ぶり。
LINEAと同じくレザーアイテムをリリースしていましたが、牛一頭まるまるサイズのレザーをほぼそのまま使用した身頃がワンピースのコートなど、誰もが想像はしても実現はさせないであろう洋服を形にしてみせました。
AVANTINDIETRO(アヴァンティンディエトロ)
カルペディエム休止後にマウリツィオ氏が手がけた靴を中心としたブランド。
カルペのころよりもシャープでパイプフィットと呼ばれるスキニーな履き心地が特徴です。
特に、ルームシューズをイメージしてつくられたこちらは一見簡素なつくりに見えますが、薄い革(しかも裏地なし)で立体成型しており、まるで素足であるいているような感覚になります。
カルペディエムのころとはアプローチが少し異なりますね。
ソールも極限まで薄くしており、ソールのエッジ部分もアール(丸み)をとってあるので、「靴」というよりは「足」という印象を受けます。
この考え方はのちのm_moriabcにも続くこととなります。
m_moriabc(メモリア)
マウリツィオ氏が今取り組んでいるのがこのブランド。
語りたいことはたくさんあるのですがこのあたりはぜひ実物をご覧いただきたいと思います。
私物ですが2足ほどギャラリーにてディスプレイしておりますのでぜひお話しにきてください、わかる範囲でご説明いたします。
D’arte(ダルテ)で取り扱っているカルペディエムの商品たち
D’arteにある商品を掲載しておきます。
ONLINE SHOPへのリンクも貼っておきますのでもし興味が沸きましたらアクセスしてみてください。
初期 カーフレザーダービーシューズ / C DIEM(カルペディエム)
初期 リネンカーフチェッカブーツ / C DIEM(カルペディエム)
06SS コットンストレートパンツ / C DIEM(カルペディエム)
ウールカーブパンツ / C DIEM(カルペディエム)
テント解体パンツ / C DIEM(カルペディエム)
レザーダービーシューズ / AVANTINDIETRO(アヴァンティンディエトロ)
ホーウィンコードヴァンダービーシューズ / C DIEM(カルペディエム)
C DIEM(カルペディエム)のお買取について
D’arteでは、アルチザンブランドの買取をおこなっております。
思い入れがあるけれど着ていない、使っていないお洋服などございましたら一度メールにてご相談くださいませ。
このコラムに辿りついて読んでくださった貴方の持ち物に興味があります。
tekuhomme@darte.jp
ぜひこちらまで、ご連絡くださいませ。