本日はTEATORAについて。
機能的なワードローブを提案するブランド、というイメージが強い方も多いかと思いますが私は日常着という枠組みをこえて「ワークウェア」として服づくりを行っているように思います。
現代人の生活に合った新しい「ワークウェア」。
他のどのブランドも行っていない革新的な提案を、ひとつずつ紐解いていきましょう。
TEATORA(テアトラ)について
2013年に始動したブランド。
ブランド発足のきっかけは、デザイナーの上出氏自身や友人たちが座って働く環境にありながらもそれに適した洋服がなかったことから。
確かに言われてみればほとんどのワークウェアは立って仕事をする前提で作られていますから座った状態で最適な服、というのは誰も掘り下げていなかったわけです。
ブランド名もまさにその座った状態に由来していて、ワークチェアに座った状態の人体を「現代の人体」と捉え、そこから①頭と胴、②右足、③左足、④ワークチェアの支柱という四つのベクトルがあるという考えから「TETRA(ギリシャ数字の4)」と「TROUSERS」をかけ合わせた「TEÄTORA」という名前になっています。
「ワークウェア」の再解釈
先ほども触れた「座り続ける」という新しい労働姿勢。
このように問題提起されると現代人の生活はほとんどが座る姿勢のままだということに気付かされます。
新幹線や飛行機での移動も基本座りっぱなしですし、最近ではテレワークやリモートワークも多く通勤すら必要なくなっています。
これまでの運動量を多くとったハードな環境でもボロボロにならない、いわゆる「動」のワークウェアから同じ姿勢で動かない「静」のワークウェアへと必要とされるものが変わってきていることを感じさせますね。
さらに、フリーランスやノマドワーカーという働き方も増えている現代ではより「ワークウェア」の再解釈が必要だといえるでしょう。
ただ、これに対して効果的なアプローチをし続けているブランドはそう多くはありません。
ここからはいかにTEATORAが「静」のワークウェアの進化に取り組んでいるかを見ていきましょう。
利用シーンに合わせたアプローチ
TEATORAの特筆すべき点として、利用シーンに合わせたアプローチの巧みさが挙げられます。
いくつか例をあげながら見てみましょう。
移動
席の広さが制限される車内や機内。
その中で快適に過ごすためにさまざまなアプローチが行われています。
例えばTEATORA定番のWallet Pantsでは後ろポケットをなくし、前ポケットとサイドポケットにすることで着席時のお尻周りの不快感をなくしたり、そのサイドポケットはコンシールジップ仕様になっているので席で体勢をかえたりしても中のものを落とす心配がないようになっていたり。
こればっかりは実際に履いて新幹線に乗ってみた方がかゆいところに手が届くつくりになっていることをとても実感できると思います。
天候・気温
移動時に問題になるのが天候や気温。
そしてこの気温の中でも意外と見落としがちなのが外は寒いのに電車の中は暑い、などの温度差。
「ひたすら涼しく、ひたすら暖かく」を追求するのではなく、温度差によって感じる不快感をなくし「快適にする」のがTEATORAのアプローチの特徴といえるでしょう。
モジュールとしての洋服
TEATORAの魅力の一つに洋服がモジュール化する、という点があげられます。
定番のPACKABLEシリーズでは洋服の内側にポケットがついていますがそのポケットに洋服自体を入れこむことができ、コンパクトに収納することが可能です。
これは旅行時(出張時)などにその真価を発揮します。
コンパクトで中身がわかりやすくキャリーケースの整頓が簡単におこなえますし、着用時には貴重品をそのポケットにしまうことで盗難防止にもなります。
デザインやシルエットにはワードローブらしさを残しつつもギアとしての機能性をしっかりと持っている、この二面性がTEATORAの魅力といえるでしょう。
利用シーンに最適なものが分かるギアチャート
TEATORAでは独自に「ギアチャート」というものが作られており、先ほどもご紹介した利用シーンをベースにモジュール機能や機能素材など必要なものを選択することでどのアイテムが自分にぴったりかを判別することが可能です。
上のTPOと書かれた行はシリーズの一覧なのですがシーズンによって新しく増えたりなくなったりもするので、現在のシーズンで確認されることをおすすめします。
TEATORA(テアトラ)のシリーズについて
TEATORAの特長といえばシーンに応じた豊富なシリーズ展開。
ブランド開始時からあるシリーズもあれば、シーズンを重ねるごとによりアップデートして後継として出されたシリーズもあります。
現在展開中のシリーズに関しては公式ページでその機能を確認することができますが過去のシリーズに関してはまとまった記事がありませんでしたのでできる限りまとめてみました。
それではどうぞ。
PACKABLE(パッカブル)
TEATORAといえばこれ、ともいうべきシリーズ。
パッカブルという言葉どおりすべてのアイテムが付属のポケットに収納可能です。
飛行機のアイコンが示すとおり出張や旅行のシーンで活躍しますね。
薄くて軽く、生地の表情もカサっとしていてどこか天然繊維のような雰囲気もあるTech-Tussah(テックタッサー)という生地を使用しており、かさばらず折りジワがはいりにくいこの生地だからこそパッカブル仕様が可能になったのだといいます。
SOLOMODULE(ソロモジュール)
SOLOTEX(ソロテックス)という帝人製の機能素材が使われているシリーズ。
SOLOTEXはファッション衣料にだけでなく寝具にも使用されている生地で、「柔らかさ」「伸縮性」「形状回復」の特性を持っています。
出張時の新幹線や飛行機内で仮眠をとる際に全方向へのストレッチが効いてストレスなく過ごすことができます。
たしかに家やホテルと違って移動中の睡眠は寝巻きに着替えるわけにはいかないので普段着のまま寝てストレスがないのはワークシーン以外でもとても便利だと思います。
DOCTOROID(ドクトロイド)
2021年からリリースした新素材。
もともとはそれまでICESCAPE(アイススケープ)という真夏での着用に特化したシリーズを出していましたがDOCTOROIDはそれの後継にあたります。
真夏用生地として登場したこちらは接触冷感に特化しており着ていて涼しいのはもちろん、肌あたりの不快感がまったくないのが特徴です。
塩縮加工のような霜降りの生地表情は化学繊維感がなく、合わせる服のジャンルを選ばないのもとても良いですね。
私自身昨年はこのシリーズにハマりすぎて夏はセットアップでこれを着て過ごしていました。
KEYBOARD(キーボード)
私も愛用しているこのKEYBOARDシリーズ。
リリースされているアイテムはこちらのKEYBOARD SHIRTのみになります。
他のシャツとちがう点はキーボードなどのタイピング姿勢(腕を固定した前傾姿勢)に特化しているということ。
カフス部分がボタンではなくストレッチ素材のリブ仕様になっており、ボタンを開けて腕まくりをしなくてもそのままスウェットのように袖をまくることが可能です。
これは長時間キーボードを触る人にとってとてもありがたいディテールですね。
前立ては比翼でカラーも見えないボタンダウン仕様になっていてとにかくミニマルでフォーマル。
それでいてストレッチが効いている生地なのでこのシャツで作業していても身体が生地に引っ張られるストレスがありません。
PACKABLE HORIZON(パッカブルホライゾン)
先ほどご紹介したPACKABLE(パッカブル)の春夏やリゾートシーンに特化したシリーズです。
「S-5」という素材を使用しており、速乾性とストレッチ性に優れています。
生地の表面が立体的になっているので肌あたりもかなり良いです。
個人的にはDOCTOROIDの方がテック感のないブランドとも合わせやすいかなあ、と思ったりしています。
COLD SLEEP(コールドスリープ)
「極涼の白」をコンセプトに開発されたこのシリーズ。
すごく好きなコンセプトです。
清潔な印象を与える白色は春夏に着たい色ですが、汚れが目立ったり透けてしまうのを気にして生地は分厚くなりがちです(特にパンツ)。
このシリーズはその透けるギリギリを追求し、涼しさと軽さを実現させたアイテムです。
色を活かすコンセプト、というのはなかなか新しいですね。
トラウザーズやショーツ以外にもトップスもリリースされています。
BARRIERIZER(バリアライザー)
このシリーズはTEATORAにおけるレインウェアの位置づけ、ですが従来のレインウェアと違って「晴天時にこそ快適なレインウェア」を追求しています。
以前Norwegian Rainの記事でも書きましたが、レインウェアの真価は「雨が降っているから着る」のではなく「雨でも晴れでも着られて急に降ってきても安心」だと思います。
BARRIERIZER(バリアライザー)はそこを的確に形にしてくれています。
アイテムもコートとパンツという、一番外側に着るであろうアイテムに絞っているところも役割が明確で好きです。
ちなみにNorwegian Rainの記事はこちらから。
Norwegian Rain(ノルウェージャンレイン)のテーラリングと機能性の融合について
TIME MODULE(タイムモジュール)
TEATORAの最上位クラスのスーツラインとしてリリースされたTIME MODULE。
見た目はクラシカルな雰囲気なのですが着ると広い可動域でストレスなく過ごすことができます。
またスーツでありながら内側の収納力がたっぷりあって、ビジュアルと機能をあわせ持ったシリーズとなっています。
SOLO SCAPE(ソロスケープ)
こちらもTIME MODULEと近いコンセプトのシリーズ。
飛行機のビジネスクラスのドレスコードに対応したスーツラインとして作られています。
機能性などもTIME MODULEと似ているのですがSOLOTEXという帝人製の高機能素材が使われているのが特徴です。
肌ざわりの良さ、シワになりにくく型崩れにも強い特性を持っているので高機能スーツの素材としてはうってつけですね。
丸洗いも可能で、出張などのシーンにも重宝する仕様となっています。
ちなみにTEATORAのシリーズで「SOLO」と名前のつくものはすべてSOLOTEXが使われています。
TEATORA(テアトラ)のアイテム一覧
keyboard shirts キーボードシャツ / TEATORA(テアトラ)
21SS WALLET PANTS OFFICE DR ウォレットパンツ DOCTOROID / TEATORA(テアトラ)
めちゃくちゃ時間がかかりそうなのでD’arteにあるアイテムからご紹介して、残りは後日追記したいと思います…
気長に待ってください。
今後のTEATORA(テアトラ)
毎シーズン新たなシリーズ、コンセプトを生み出しているTEATORA。
その核心に迫るアプローチは洋服を作っている、というよりはガーメントの新しい考え方を提案していると言っても過言ではないでしょう。
さらにそれらが商売のために無理矢理にコンセプトをひねり出しているという感じが全然しないことに驚かされます。
四六時中、ガーメントのありかたについて考えていてもここまでクリティカルに今の衣服の言語化されていない問題点に辿り着けるものか、と感心させられますね。
私もさらに進化を続けるTEATORAの今後のアプローチを楽しみにしています。
TEATORA(テアトラ)のお買取について
D’arteでは、TEATORAの買取をおこなっております。
思い入れがあるけれど着ていない、使っていないお洋服などございましたら一度メールにてご相談くださいませ。
このコラムに辿りついて読んでくださった貴方のお持ち物に興味があります。
tekuhomme@darte.jp
ぜひこちらまで、ご連絡くださいませ。