今日はオランダ発のレザーブランドKAI HAMELEERS(カイハメレース)について。
ソリッドな印象のレザーブランド、というざっくりとしたイメージは持っていてもどんなブランドかまでしっかりと知っている方は少ないのではないでしょうか。
出ている情報もあまりないので、知る機会が少ないこのKAI HAMELEERS。
実は優れた生産背景がユニークでハイクオリティなものづくりを可能にしているのですが、いったいどんな環境からKAIは生まれたのか。
レザー界の傑物に迫っていきましょう。
KAI HAMELEERS(カイハメレース)とは
オランダ発のレザーブランド。
アムステルダム郊外のブレダという土地にある古い古い皮を鞣(なめ)す工場を借りてアトリエとして皮革製品の生産をおこなっています。
工場は1895年設立とのことで、約130年前からのこる歴史あるアトリエです。
ブランド設立は2013年。
ブランドの名前にもなっているデザイナーKai Hameleersと同じく革などを使った表現活動も行なっていたJosa Aussems(写真の方)が出会いブランド「KAI HAMELEERS」は生まれました。
製品には「 KAI 」とだけ表記され、いわゆるブランドタグといったものはついていないのが特徴です。
日本では2014年の秋冬から取り扱いがスタートし、世界の中でも主に日本をメインマーケットとして展開していましたが数年してブランドが事実上の休止となり、現在店頭で実物を見られるところがほとんどありません。
健康面が休止理由のひとつとは言われていますが詳しくは明かされていません。
休止後も根強いファンが多く、今も再開を心待ちにされているKAI HAMELEERS。
ここからはそんなKAI HAMELEERSのものづくりの特徴についてみていきましょう。
良質な革が生まれる土壌
レザーを使用したブランドなので当たり前ですが、レザーの品質はプロダクトの生命線です。
KAI HAMELEERSはこのレザーにおいて、他のブランドにはない圧倒的なアドバンテージがあります。
それは彼女たちのアトリエがタンナリー(皮鞣し工場)であること。
そしてそもそもオランダが皮革産業においてとても適した土壌であること、大きくこの二つがあります。
タンナリーという特殊なアトリエ
ふつう、革を鞣す工場(タンナリー)と製品を作るアトリエは別の場所にあります。というかブランドがこの二つをどちらも手がけること自体がとても珍しいことです。
自分たちの思い描くプロダクトを作るには革の厚み、硬さ、質感などこだわりたい部分はたくさんあるわけですが自分たちが鞣しの工程から携わることでそのクオリティをより自分たち向きに高めることができます。
また、他の業者を使わないのでコスト面でも中間マージンがかからないという強みがあります。
これはタンナリーを借りているからできることですね。
※ちなみにタンナーとタンナリーという2つの呼び名がありますが大規模なものをタンナー、そうでないものをタンナリーと呼ぶそうです。
工場にはミシンやバフ、革の削ぎ機などの昔の機器が残っていてこれらを今でも使用し製作を行っているようです。
自分たちのスタイルに合った道具や機械を使えて、生産の工程をすべて自分たちが手がけることでクオリティの統一とコストカットをおこなっているのですね。
VIDEO
優れた革の産地 オランダ
もうひとつの要因はオランダが優れた革の産地であること。
江戸時代に日本に伝わったとされるランドセル(の原型のバックパック)もオランダから渡来したものでしたね。
オランダはフランス、ドイツ、ポーランドと並び牛革の四大聖地として数えられる皮革大国です。
革の品質には水が良し悪しが大きく関係しています。
水を汲む川が一本違えば仕上がりが違う、といわれるほど水は皮鞣しの際にクオリティを大きく左右します。
先述したとおり、KAI HAMELEERSの生産が行われているオランダ・アムステルダムのブレダはもともとが皮革産業の中心地でした。
KAI HAMELEERSはポーランド産の最高級カウハイドの一枚皮を原皮とし、それをベジタブルタンニンで鞣して革にします。
アニリン染色
KAI HAMELEERSのもう一つの大きな魅力はアニリン染色という染色方法です。
土壌の恩恵と鞣しの手間によって作られたハイクオリティな革により深い表情をもたらすのがこの工程。
もともとのベジタブルタンニンのナチュラルな風合いを殺さず、よりムラ感とコントラストを強める染色は簡単にできることではありません。
このアニリン染色をおこなうと染料によって透明感のある薄い膜が形成され、革の色目や質感がとても自然に出るので革がもともと持っている模様をそのまま活かすことができます。
この染色方法は通常ラグジュアリーブランドなどでよく使われるのですがこれには理由があってキズがある革だとこの染色では透明な膜を形成するので隠すことができません。
なのでキズのない綺麗な革にのみこの染色を施すことになります。
が、KAI HAMELEERSのようなアルチザン然としたブランドがしたい表現からすれば必ずしもキズのない綺麗な革にだけアニリン染色をしないといけないわけではないと捉えているのでしょう。
それが逆に他では見ることのないユニークで独自の雰囲気をもった革を作り出すことになっているのですね。
しかもKAI HAMELEERSでは独自に開発した染料を使用しているようで、よりその精度を高めていることが窺い知れます。
ただこのアニリン染色にはデメリットもあって、表面の塗膜が薄いため水に濡れるとシミになりやすいです。
が、KAI HAMELEERSの革は一度水に浸して部分的にシミにならないようにしています。逆転の発想…
色もBlack、Grey1、Grey2、Brown、Dark Brownという5種類の色があるようです。
手間のかかる吊り込み
なんといってもKAI HAMELEERSの特徴といえばこれではないでしょうか。
いわゆる通常のレザープロダクトは革と革とを縫い合わせ袋状に作ったりしますがKAI HAMELEERSはどちらかといえば靴づくりのような木型を用いた製法をとっています。
箱状や筒状の木型を用意し、それらに革を当てて吊り込んでいきフォルムを成形していくのですがこれはほぼ靴作りの工程です。
木型に吊り込んでフォルムを成形することで縫製箇所が少なくなり、よりミニマルなデザインに仕上がります。
このような製法もあいまってKAI HAMELEERS のレザープロダクトは独特の佇まいを感じさせるのかもしれませんね。
KAI HAMELEERSのアイテムたち
ここからはそんなKAI HAMELEERSのアイテムたちをご紹介していきましょう。
wallet case(ウォレットケース)
型はめの製法をふんだんに使ったこちらの財布は完全な箱状。
小銭やカードなどを入れていなくてもそのフォルムは変わらず自立しています。
小銭を入れる部分は革がくり抜かれていて箱状に。
内側も空き口にあわせて化粧貼りしてくれているのでコインがどこかにいくこともありません。
カード側はこんな感じ。
スロットが2つに分かれています。
ちなみに外の札室がないプレーンな箱型のSquare Box(SC)というモデルも存在します。
credit card box(クレジットカードボックス)
ccb-02という品番のアイテム。
王道!といわんばかりの型はめ吊り込みの製法で作られています。
背面部分はパーツで繋がっていて二つに完全に分かれてしまうことがないように開閉ができます。
ちなみにこれを大きくしたようなipacという品番のiPad用ケースもあります。
Credit Card Holder(クレジットカードホルダー)
こちらはタイプのちがうカードケース。
内側が型はめ仕様になっていて大きく取られたマチが特徴です。
belt(ベルト)
品番でいうとBEになります。
ノンステッチのミニマルなベルト。
ベルトループ部分が型はめで堅牢に作られています。
bag(バッグ)
BA-02
縦長のトートバッグ。基本的にバッグ類はショルダー、トート問わずこの「BA」という品番に含まれます。
BA-03
BA-04
当店にもBA-04の亜種のようなショルダークラッチがございます。
BA-05
バニティバッグ型のハンドバッグ。
男性もですが女性にも合いそうなバッグです。
BA-07
バッグというより箱そのもの。
サイズがS、M、Lとあるようです。
ストラップをつけて肩がけすることもできます。
BA-08
BA-09
肩がけのトートバッグのようなモデル。
KAI HAMELEERSにしては珍しく立体的なフォルムが特徴的です。
Plug Box(プラグボックス)
縦長の小さな箱。
ストラップが細い紐なので他のショルダーバッグとはかなり毛色がちがいますね。
Box Case(ボックスケース)
こちらも箱型のバッグ、ですが少しおもしろいギミックが。
2段階で開く箱になっているんですね。
作るのに相当な手間がかかりそうです。
CLUTCH CASE(クラッチケース)
Credit Card Boxがバッグになったようなアイテム。
薄い鞄なのでさまざまなコーディネートに取り入れやすそうです。
Oval Case(オーバルケース)
曲げわっぱやシェーカーボックスを彷彿とさせる民藝感ただよう箱。
これも確か大きさがいろいろあったような気がします。
Note Block(ノートブロック)
メモパッド。
レザーの厚みが重厚感あってとてもかっこいいです。
ただのメモパッドと考えたらめちゃくちゃ高いんですが個人的にとても欲しいです。
D’arteのKAI HAMELEERS(カイハメレース)のアイテム
レザーベルト / KAI HAMELEERS(カイハメレース)
WC Grey1 型はめレザーウォレット / KAI HAMELEERS(カイハメレース)
WC Grey2 型はめレザーウォレット / KAI HAMELEERS(カイハメレース)
レザーショルダーバッグ / KAI HAMELEERS(カイハメレース)
BA-05 レザーハンドバッグ / KAI HAMELEERS(カイハメレース)
KAI HAMELEERS(カイハメレース)のお買取について
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